花ひとつ咲いてねぇ道なんて

つまんなくて歩けねーぜっ

Clear Snow

みんな大好きClear Snowですが、この曲を初めて聴いた時、思い浮かべた友人がいました。

 

 

 

 

 

これは、私の記憶と歌詞がリンクしただけで、曲に対する思い入れが他にある方には、不要な話かもしれません。

また、普通に大好きな曲だから、誰かの思い出まで重ねたくない、という方は読まない方がいいかもしれません。

あなただけのClear Snowを大切にしてください。

 

 

そんなわけで、ご興味ある方だけどうぞ。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出の季節は冬ではなかったかもしれない。

 

雪のイメージは正直そんなにない。

 

 

 

彼女と知り合ったのは、小学生の頃。

友達のお母さんがピアノ教室を開いていて、遊びに行くと、そこに習いに来ている子がいた。

レッスンが終わると一緒におやつを食べたり、遊んだりすることもあった。

同学年の子で、友達の幼なじみ、という認識はあったが、クラスも違うせいか、4年生になるまであまり会話を交わしたことがなかった。

 

4年生当時もクラスは違っていたが、学芸会で同じ裏方を担当することになり、その時に初めてお互いのことをちゃんと知ったように思う。

そして、5年生で初めて、同じクラスになった。

 

クラスに一人はいる、絵のうまい子。

そのポジションにいたのが、当時の私と彼女だ。

それが初めて同じクラスになった。

 

私なんかは好きなマンガを真似て描く程度のものだったが、彼女は美術教室に通い、将来は美大付属の学校を受験するのだと言っていた。

どんな勉強をするのか、そもそも絵を習うってどんなことなのかわからなかった私には、彼女はとても刺激的な存在だった。

 

あの年頃だから出来るんだろうな、と今では思うけど、生まれて初めて、人に「友達になろう」って言った気がする。

授業中に意見が対立して、私が話してるのに彼女が茶々を入れるものだから、怒って「黙ってて!」って制したことがある。笑

そんなことも初めてだったけど、なんだかそれが尾を引くのが嫌で、その後「ごめん」て謝りに行った。

普段、自分が正しいと思ったら頑として曲げないし謝らないのに。笑

 

不思議とウマが合って、一緒にいるのが楽しくて楽しくて、ほぼ毎日のようにどちらかの家で遊んで、家族ぐるみで遊園地に行ったり、旅行に出かけたりもした。

通っている絵画教室を見学させてもらったり、お互いの習い事の発表会にも行ったりした。

きっと親友ってこういうのを言うんだ。

私たち親友だよねってお互い言い合った。

 

わずか一年で、その子は転校が決まった。

一軒家に暮らすため、隣の県に越して行った。

幸い、地元路線の沿線だったため、頻繁にとは行かなくても、週末に会うことが出来た。

普段は手紙を毎日のように書いた。

メールなんてない頃、レターセットや切手を選んで、日々の会話の代わりに、たくさんの文字を交わした。

 

中学生になっても、高校生になっても、会う機会は減っても、ずっと私たちは親友だった。

学校に行けば、それなりに仲の良い子も居たけれど、長い付き合いと、お互いの存在がとにかく刺激であった私たちの関係からすると、それに匹敵するものはなかったように思う。

 

その後、彼女はいろいろあって美大を諦め、私のいる大学に追って入学することになった。

よほどそれまでの環境がプレッシャーでもあったのか、彼女の交友関係はやや派手なものになっていく。

対して私は、学内でひっそり過ごす方を好んでいた。

 

少し関係性が変わったのは、それぞれ恋人が出来てからだろうか。

高校生の頃は、互いの恋愛観やら、ノロケ話やら、性にまつわる話だとか、そんなことを語らうにも真剣で、語り合うことにお互いたくさんの時間を費やしたけれど、大人になってからは、それこそ自分により近い存在なのは親友ではなく恋人になっていったように思う。

 

たまに連絡を取ると、彼氏といるところだったり、タイミングが合わなかったり、電話や手紙やメールの頻度も変わってきていた。

 

社会人になって、さらに環境が変わり、追い打ちをかけるように彼女の母親が倒れた。

一命は取りとめたものの、記憶は失われ、前向性健忘といって、新しいことを覚えることが出来なくなってしまった。

 

母親の介護に追われ、日々家事をこなし、どうやったら現状から抜け出せるのか、彼女はもがき苦しんでいた。

 

 

彼女が高校生の時から、実は心療内科にかかっていることを知ったのは、ずっと後の事だ。

大学生になって、彼女が一番よく一緒にいた友達は、そのことを大学の頃から知っていたけど、ずっと口止めされていたことを後から教えてくれた。

私にだけは知られたくなかったらしい。

 

 

彼女を慕う人は多かったし、当時のことを相談しているのは大学時代の友人が主だったのを知っていたから、いつだったか、「親友だよね?」って聞かれた時に動揺してしまったことを今も悔いている。

 

 

 

 

 

ある日彼女はこの世から居なくなった。

 

 

 

 

 

彼女には、夢中になると我を忘れて駆け出す癖があって、咄嗟に腕を掴まれて、引き摺るように一緒に走らされたことがある。

本当に後先考えない、行動がまず先に立つ人で、直感的でアーティスティックで、予想の斜め上ばかり行くけれど、予想通りの失敗を繰り返しては落ち込んでいたりする。

手帳に拾った落ち葉や、今集めてると言っていた、マックのドナルドがゴミ箱にゴミを捨てているマークをベタベタと貼り、まるで辞書のように膨れ上がったそれを持ち歩いていた。

ある時は小説を書いてみたり、ある時はバンドを始めてみたり、名前を変えてみたり、ウィッグにティアラをつけて大学に来たこともあった。

 

私と全く違うタイプなのに、何故あんなにも気が合ったんだろうな。

 

 

 

 

 

Clear Snowの歌い出しは、彼女のことを思い出す。

 

後先考えずまた駆け出す君

その背中夢中で追いかけて走る

 

本来、恋の歌なのかもわからないけど、

少なくとも私には、この曲で強く思い出すことの出来る相手がいる。

 

変わらない君に会いに行こう

記憶の扉今開けて

幻だっていいから

時を止めるように

 

この曲のある限り、私は彼女を思い出すし、忘れない。

なんなら、彼女と再会しているような気持ちにすらなる。

 

 

彼女が亡くなったあと、疲れた家族に代わって友人達で寝ずの番をした。

翌朝、通夜の支度のためそれぞれ家に帰る時、見上げた空がそれは綺麗で、みんなでしばし見入っていた。

 

曲中では「始まりのあの日」は同じ日のことかもしれないけれど、私にはふたつイメージするものがある。

彼女に出会った「あの日」と、彼女と別れた「あの日」…

 

 

Clear Snowが記憶に舞う雪なのだとしたら、その度に彼女を思う私は、あながち間違いではないのかもしれない。

 

 

いつか、いつか、

10人の歌う姿を見られますように。

 

 

また、彼女に会えますように。